トライク
 
バイク屋さんからトライクについて相談されました。

二輪車の区分
排気量50cc超のトライクは道路運送車両法で「側車付二輪自動車」に区分されるため、排気量125cc以下であっても軽二輪として登録されます。
このバイク屋さんは90cc以下の黄色原付二種ナンバーを掲出したトライクを見たそうで、
「トライクが原付二種登録できるなら保険や税金が安くなってお客も喜ぶだろう」
と言います。

そして、
「現実に登録できて街中を走っているのだから何か方法があるはずだ」
と言うのです。

私は、
「それは違法です。登録出来たのは役所に虚偽申告しているだけ」
と回答しましたが、バイク屋さんは納得せず、
「警察に問い合わせる」
と言いました。

警察がトライクや原付二種の区分について知っているはずがないので、問い合わせるなら国土交通省に訊くように進言しましたが、このバイク屋さんは何故か知り合いの同業者に訊いたそうで、その人が
「125cc以下だから原付二種になるはず」
と返答したと、鬼の首でも取ったように言い放ちました。

自分に都合の良い意見だけを信じて、他の意見に耳を貸さない人はどこの世界にも居るものですが、バイク屋さんには特に多いように思います。

遂には、
「車台番号を見ただけでは二輪か三輪かなんて役所は分からない」
などと言い出したため、私も相手をするのがアホらしくなって、
「今まで積み上げたお客や取引先や信用を全て失っても良いなら、どうぞ好きなようにしてください」
と申し上げ、今後この件には一切協力しないことを申し添えました。

まあ、実際には三輪の乗り物を原付二種として正規に登録する方法はあるにはあるのですが、この人に言っても話がややこしくなるだけなので言いませんでした。



さて、
「トライクが原付二種登録できるなら保険や税金が安くなる」
と言いますが、実際どれ程違うものでしょうか。

地方税法463条に次のように規定されています。

(種別割の標準税率)
第四百六十三条の十五 次の各号に掲げる軽自動車等に対して課する種別割の標準税率は、一台について、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 原動機付自転車
イ 総排気量が〇・〇五リットル以下のもの又は定格出力が〇・六キロワット以下のもの(ニに掲げるものを除く。)
 年額 二千円
ロ 二輪のもので、総排気量が〇・〇五リットルを超え、〇・〇九リットル以下のもの又は定格出力が〇・六キロワットを超え、〇・八キロワット以下のもの
 年額 二千円
ハ 二輪のもので、総排気量が〇・〇九リットルを超えるもの又は定格出力が〇・八キロワットを超えるもの
 年額 二千四百円
ニ 三輪以上のもの(総務省令で定めるものを除く。)で、総排気量が〇・〇二リットルを超えるもの又は定格出力が〇・二五キロワットを超えるもの
 年額 三千七百円
二 軽自動車及び小型特殊自動車
イ 二輪のもの(側車付のものを含む。)
 年額 三千六百円
ロ 三輪のもの
 年額 三千九百円
これによると、軽自動車税では、125cc以下の二輪車は2400円に対して、三輪の軽二輪車は3900円です。

また、2024年の自賠責保険の掛け金(離島を除く)は24ヶ月で原付が8560円、軽二輪車は8920円となっています。

どちらもわずかな金額差しかありません。

一方、軽二輪車を原付と偽って軽自動車税を過少申告した場合、地方税法違反となり5年以下の懲役又は100万円以下の罰金もしくはその両方、という大変重い罪になります。


(環境性能割の脱税に関する罪)
第百六十六条 偽りその他不正の行為により環境性能割の全部又は一部を免れたときは、その違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

また、同じく軽二輪車を原付と偽って自賠責保険料を過少申告した場合は、自動車損害賠償保障法違反となり、6ヶ月以下の懲役又は二十万円以下の罰金という、こちらも大変重い罪になります。

第八十七条 偽りその他不正の手段により、自動車損害賠償責任保険証明書若しくは自動車損害賠償責任共済証明書又は保険標章、共済標章若しくは保険・共済除外標章の交付又は再交付を受けたときは、その違反行為をした者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

ここで言う罰金とは、交通違反通告制度の反則金とは異なり刑罰ですので、お金を払えば終わりという簡単な物ではありません。
学生なら学校は退学、勤め人なら会社は解雇されるでしょう。
前科として生涯ついて回りますから、再就職など、その後の人生に大きなマイナスとなって立ち塞がります。
たかだか千円程度の節約のためには大きすぎるリスクだと言えます。

こんなヤバイ橋を客に渡らせようとするバイク屋さんも無知とは言え大概だと思います。