三輪バイクとは
 
先日、損保会社のチューリッヒがサイドカーについて解説した記事がほぼほぼデタラメであることを紹介しましたところ、大変大きな反響がありました。

どうデタラメなのか、興味のある方は下記のリンク先をご参照ください。






そのチューリッヒが特定二輪車を始めとする三輪バイク(元記事では「3輪バイク」と記載)についての記事を掲載していました。



この記事はモータージャーナリストの高根英幸氏の署名入り記事となっています。
最近のチューリッヒの記事は正確性を期すためかライターの署名入り記事に改訂されているようですが、この記事は果たして信頼に足るものなのでしょうか。
今回も記事の内容を順を追って見ていきたいと思います。

「3輪バイクの法的区分」として、表が掲載されていますが、これがイキナリ間違っています。

3輪バイクの法的区分
【「3輪バイクの法的区分」当該記事のスクリーンショット】

道路運送車両法の車両区分として「特定二輪車(保細第2条の2)」とあり、条件が書かれていますが誤りです。

「特定二輪車」とは道路交通法における区分の呼称であり道路運送車両法では使用されません。
また、ここに提示されている条件も道路交通法のもの平成21年 内閣府告示第二百四十九号であり、保細第2条の2(道路運送車両の保安基準の細目告示第2条の2)ではありません。

内閣府告示(道路交通法)と保安基準(道路運送車両法)の要件は異なっており、内閣府告示では「三個の車輪を備えていること。」となっていますが、保安基準では「3個以上の車輪を備えるもの」となっています。
これは、2008(平成20)年10月の制度発足時には「3個の車輪」だったのですが、2009(平成21)年10月に「3個以上の車輪」に改正されました。

【参考】
改正前:平成20年 2008年10月15日付 官報 号外 第225号
改正後:平成21年 2009年10月23日付 官報 号外 第226号

この改正は当時、国内外でオートバイの基本構造を持ち四個の車輪を備えた「四輪バイク」が開発され始めており、これら新しい乗り物に対応する為ではないかと考えられます。

qooder
【四輪バイクのQuadro Vehicles・Qooder(スイス、市販車)】


一方で、道路交通法はそのまま据え置かれたので「三個の車輪」のままとなっています。


また、保細第2条第1項第4号イをサイドカー、保細第2条第1項第4号ロをトライクとしていますが、これも誤りです。

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第2条の四では「「側車付二輪自動車」とは、次のいずれかに該当するものをいう。」と定められおり、サイドカー、トライクの区別は無く、いずれかに該当すれば「側車付二輪自動車」となります。

例えば、ウラル・ギアアップは保細第2条第1項第4号イに該当しますがトライク(普通自動車)ですし、クラウザー・ドマニは保細第2条第1項第4号ロに該当しますがサイドカー(自動二輪車)です。

ウラル・ギアアップ2022
【ウラル・ギアアップ(普通自動車区分)】


FullSizeRender
【クラウザー・ドマニ(自動二輪車区分)】

道路運送車両法と道路交通法では車両の区分が一致しないので、一方の区分を他方にそのまま当てはめることは出来ません。


側車付二輪車(サイドカー、トライク)
側車付二輪車として区分される3輪バイクの条件は以下となります。

側車付きの二輪車(サイドカー)(保細第2条第1項第4号イ)
サイドカーは、2輪のバイクに人や荷物をのせるための側車を取り付けたものです。
サイドカーは、道路運送車両法の保安基準の細目を定める告示【2005.06.01】によって、「直進状態において、同一直線上にある2個の車輪及びその側方に配置された1個(複輪を含む)又は2個(二輪自動車の片側の側方に備えたものに限る)の車輪(以下「側車輪」という)を備えた自動車」と定義されています。

トライク(保細第2条第1項第4号ロ)
同上。

屋根付きの原付/スクーター
デリバリー業務などで使われる屋根付きの原付やスクーターなど、排気量が50ccの3輪車は、道路運送車両法では車輪の数の制限がない「第一種原動機付自転車」に分類されます。
記事内各所で「屋根付き」をやたら強調していますが、第一種原動機付自転車の保安基準に屋根の有無は関係ありません。


二輪車同様、125cc超の3輪バイクであれば高速道路の走行が可能です。
運転免許について、特定二輪車とサイドカーを「3輪バイク」とまとめた上で「125cc超」であれば高速道路を通行可能としていますが誤りです。

高速道路の通行可否は道路運送車両法における自動車か否かで決まります。(高速自動車国道法第二条の4
125cc以下の特定二輪車は道路運送車両法では「原動機付自転車」(原付二種)となる(道路運送車両の保安基準の細目告示第2条の2)ため、高速道路の通行は出来ませんが、サイドカーは「側車付二輪自動車」となるため51cc以上であれば高速道路の通行が可能です。
なお、上記の通り運転免許は高速道路の通行可否には関係ありませんので、例えば小型限定普通二輪免許所持者が125cc以下のサイドカーを運転して高速道路を通行することは問題ありません。

先程も述べた通り、道路運送車両法と道路交通法では車両の区分が一致しないので、一方の区分を他方にそのまま当てはめることは出来ません。


3輪バイクの排気量別に見た各種条件

【「3輪バイクの排気量別に見た各種条件」当該記事のスクリーンショット】

軽自動車税について「(トライクの場合)3,900円」とありますが、これはトライク(側車付二輪自動車)ではなく三輪自動車の税額です。
いわゆるオート三輪など道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第2条の三に該当する軽自動車はこの税額となります。
トライクを含む側車付二輪自動車は二輪自動車に準じた税額となります。



サイドカーの記事に比べると幾分かマシですが、それでも多くの誤りが見つかりました。
特定二輪車を含む三輪バイクについては誤った理解をしている人が多いのですが、この記事を書いた方は四輪のモータージャーナリストの方だそうで、二輪車の区分や法制度については詳しくないと見受けられます。

チューリッヒの記事については他にも多くの記事で誤りの指摘があります。
これほど誤った記事を多数掲載していると会社自体の信用が低下してしまうでしょう。
記事が署名付きになりましたがライターに全て任せず、ファクトチェックの仕組みが必要では無いでしょうか。