サイドカー
運転免許

以前、損害保険会社のチューリッヒが、サイドカーの運転に必要な免許や、適用される法規について解説している記事を紹介した。
この記事は、書かれている内容が八割方デタラメと言うとんでもないもので、損害保険会社であってもサイドカーに対する認識はこの程度なのかと驚くと共に、こんな認識では、もし事故に遭ったとき正しい被害査定をしてもらえるのか大変不安になった。

 


同じテーマを、バイクメディアの「バイクのニュース」が記事にした。
今度は書いたのがバイクメディアなので、チューリッヒのようなことは無いだろうと思ったのだが、読み進めると気になるところがいくつかあった。

では、その記事の問題箇所を順に見ていこう。

元記事では冒頭から、サイドカーは構造の違いにより免許が異なることを示している。
そこまでは合っている。

 通常のバイクの乗員は最大2名です。しかし、サイドカーの場合は側車に人が乗れるため最大3名まで乗車が可能となります。
乗車定員を定めている道路運送車両法五十三条では「二輪の軽自動車(側車付二輪自動車を除く。)にあつては乗車定員二人以下」としており、二輪の小型自動車にはこの制限が無い。そして、側車付二輪自動車は除外されている。
また、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示159条他では「乗車定員は、運転者席、座席、座席に準ずる装置及び立席の定員の総和とする」としているので、サイドカーだからと言って乗車人数の制限は無く、車検証に記載されている乗車定員まで乗車させることが可能だ。
実際、二名が乗車できるサイドカー(乗車定員は4名)が存在する。

 見た目からサイドカーの運転はバイク免許で運転できそうに見えます。しかし、実際はサイドカーの構造で、運転に必要な免許が異なり、バイク免許と普通自動車免許と分かれています。基準はいくつかありますが、大きく分けている基準は、側車を切り離して走行可能か、エンジンの動力伝達するタイヤがどちらにあるか、という2点です。
これは警察庁の通達「三輪の自動車の道路交通法上の取扱いについて」に記載されている内容だ。
ただし、実際の判断は車両毎におこなわれる上、判断基準は形骸化されていて、この基準に該当しない区分とされている車種も存在する。

FullSizeRender
例えばクラウザー・ドマニは自動二輪車の区分だが、サイドカー一体型で分離することは出来ず、さらには後輪がオフセットされているため、前輪と後輪が一直線ではない。

URAL_2019GearUp_5
一方、ウラル2WDは前輪と後輪が一直線で、パートタイム2WDの為、側車の駆動を停止することが出来るが、区分は普通自動車となっている。
この件について警視庁交通相談に確認したところ、現場ではドライブシャフトが側車に繋がっているかどうかで判断しているそうだ。

また「側車を切り離して走行可能」とあるが、これはあくまで構造上の話であって、実際には側車を切り離すと車体各部を二輪車として再調整せねばならず、単に側車を切り離すだけでは走行することは出来ない。登録においても、側車を切り離したら二輪自動車(または原動機付自転車)に構造変更手続きせねばならない。

 側車を切り離して走行可能なサイドカーは、道路運送車両法では「側車付二輪自動車」として扱われ、バイクの免許で運転できます。その一方で、側車が切り離せないサイドカーは「三輪車」扱いになり、普通自動車免許で運転することができます。
非常によく見かける誤りだ。
道路運送車両法における「側車付二輪自動車」の区分は、トライクが「三輪自動車」の区分であった時代には文字通り「サイドカー付きオートバイ」の事だったが、現在ではトライクも含む区分となっている。
一方、道路交通法における「自動二輪車」の区分はトライクを含まず、二輪車とサイドカー付きオートバイを合わせた区分だ。
このように道路交通法と道路運送車両法では自動車の定義が異なるため、道路交通法の管轄である運転免許の区分を説明するのに道路運送車両法の区分を使っては正しく説明できない。
この場合は「側車付二輪自動車」「三輪車」ではなく「自動二輪車」「普通自動車」とするのが適切だ。
チューリッヒの時もそうだったが、誤った記事は道路交通法に関することを道路運送車両法で説明(あるいはその逆)しようとして破綻しているものがほとんどだ。
「側車付二輪自動車」と言う字面から「サイドカー付きオートバイをのことだ」と盲目的に解釈してしまうのだろう。

 代表的なサイドカーは、ロシアのIMZ・ウラルが販売しているサイドカーです。ウラルのサイドカーは走破性を高めるため側車にも動力を伝えて駆動させることができます。駆動を常時伝えるフルタイム2WDと切り替えて動力を伝えるパートタイム2WDとモデルによって分かれています。
現行のウラルのラインナップにはフルタイム2WDが無く、パートタイム2WDと、側車が駆動しない1WDのみだ。

 扱いでは三輪車であるため、普通免許で運転しなくてはいけません。逆に側車を切り離して、一般的なバイクとして走行可能なものはあくまで、2輪車扱いであるため、排気量に見合ったバイクの免許で運転ができます。
道路交通法には「三輪自動車」の区分は無く、道路運送車両法の「三輪自動車」は「側車付二輪自動車」以外の三輪の自動車(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第2条の三)のことなので、ここでは「普通自動車であるため」とするのが適切だ。

 注意点は排気量50cc以下のバイクに側車を付けるカスタムをしても、側車は乗員用に使えません。エンジン排気量50cc以下のバイクは2人乗りが禁止されているからです。
そもそも50cc以下のバイクに側車を付けても側車付二輪自動車とはみなされない。
道路運送車両法では三輪の「原動機付自転車」となるし、道路交通法では「原動機付自転車」だからだ。
因みに50cc超125cc以下の二輪車(原付二種)に側車を付けた場合は「側車付軽二輪」となる。運転免許は普通自動二輪免許(小型限定も可)だが、原動機付自転車ではなく自動車となるので自動車専用道路も通行可能になる。


あと、間違いでは無いけど、サイドカーの特性を説明するのに、テキストでは左側車を例にしているのに、その後のウラルジャパンのブラド社長のインタビューでは右側車を例に説明しているので、どちらかに統一したほうが分かり易いんじゃ無いかと思った。

残念ながら、バイクメディアの記事であっても、サイドカーへの理解はほど遠いことを実感する内容だった。