Kintone α GO
 
保安部品を装着し公道での使用可能を謳って販売されていた電動キックボード「Kintone α GO」(キントーン アルファ ゴー)の制動装置が保安基準に適合しないことが判明したと、11月18日、販売元の株式会社KINTONE発表した
既に販売された商品は返品、返金を受け付けている。



Kintone α GOは、「国土交通省が定める保安部品を適切に取り付けることにより、電動キックボードを原動機付自転車として登録する」ことで公道での使用が可能と謳い、多くのメディアにも取り上げられたことから、クラウドファンディング「MAKUAKE」「CAMPFIRE」で総額3400万円以上の支援を集めて2019年10月から商品化プロジェクトが開始された。

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【MAKUAKEのプロジェクトページ】

しかし、プロジェクト開始直後から、商品画像や動画を見た支援者らから「違法ではないか」との指摘が相次いだ。

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【MAKUAKEより】

例えば、この車両の後方ウインカーはテールランプと一体型のものが採用されているが、ナンバープレートと比べると横幅がかなり小さいことが分かる。
保安基準の細目を定める告示第256条の2の三などでは、

原動機付自転車に備える方向指示器は、前方に対して方向の指示を表示するためのものにあっては、その照明部の最内縁において 240mm 以上、後方に対して指示を表示するためのものにあっては、その照明部の中心において 150mm 以上の間隔を有するもの
となっているが、この車両の方向指示器の間隔(両端間ではなく照明部の中心の間隔であることに注意)は10センチ程度しかない。

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【MAKUAKEより】

また、この車両の前輪ブレーキは、スイッチを押すことで前輪駆動のモーターを減速させる「電磁ブレーキ」が採用されている。

道路運送車両の保安基準第61条では、

原動機付自転車(付随車を除く。)には、走行中の原動機付自転車が確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、かつ、平坦な舗装路面等で確実に当該原動機付自転車を停止状態に保持できるものとして、制動性能に関し告示で定める基準に適合する2系統以上の制動装置を備えなければならない。
と定めている。
モーターの減速力を制動に用いるものは、いわゆるエンジンブレーキであって機械式のブレーキでは無いし、停止状態を保持できないので61条のブレーキの要件も満たしていない。

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【MAKUAKEより】

また、車両をバッグ等に入れず、そのまま電車に乗車する行為は鉄道各社の旅客営業規則に抵触するのではないかとの指摘もあった。

プロジェクト実行者の株式会社KINTONE(以下「K社」)は、これらの指摘に対して何ら回答せず、無視し続けていたが、2020年1月になって「グレードアップ」と称して灯火類を変更した。
また、電車への持ち込みについては言及していないものの、「専用バッグを支援者様全員にプレゼント」するとした。

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【保安部品が変更された試作車】

しかし、当初のデザインから大幅に変更され、あり合わせの部品を寄せ集めた様な姿に支援者から反発が相次いだ為、K社は再度デザインを変更した。

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【公開された最終試作品】

2020年4月には最終試作品の画像が公開されたが、この時点でもブレーキに関する改修はおこなわれなかった。

2020年7月に量産が開始され、2020年10月末に出荷が開始されたが、指摘を受け改めて関係機関に確認した結果、ブレーキが保安基準に適合しないことが判明したと言う。

このプロジェクトが失敗した原因は、プロジェクト実行者であるK社が支援者の声を無視してしまった事に尽きると思う。
当初から実行者が支援者の声を真摯に受け止め、疑問や問い合わせに対して調査、回答する姿勢があれば、これらの問題点はすぐに判明して十分にやり直す時間があったはずだ。

支援者の声を無視する姿勢はK社の方針だったのかも知れない。
これ以前にもK社は公道使用可能な電動三輪車をクラウドファンディングしたことがあるが、この時も製品の不具合を報告する支援者のコメントを一切無視し続けていた。
品質に対する苦情なら無視し続けて支援者が泣き寝入りすればそのうち収まるかも知れないが、法的な問題なら話は別だ。
保安基準に適合しないことを知らずに運転していて、交通違反となれば運転者に処分が課されるし、大事故になればK社の責任も問われるだろう。

近年、公道使用可能を謳う電動キックボードが販売されることがあるが、保安基準について軽く考えているメーカーが多い気がする。
少し前に問題になった、ドンキホーテが販売し、回収騒ぎになった電動キックボードもそんな感じだった。
保安基準への理解が足らず、灯火類さえ付いていれば公道走行可能だと誤解しているようだ。
恐らく公的機関や専門家への確認も取っていないのだろう。

クラウドファンディングは通信販売ではない。
この世に無い新しいプロダクトやサービスを生み出そうとするプロジェクト実行者に対して、支援者はその実現を期待して応援購入=出資をしている。
支援者は実行者に対してアイデアや希望を伝えるし、進捗が思わしくなければ苦言を呈する。
当初のプレゼンと異なるものが出来上がったなら抗議もする。
全てはより良いリターンを望むが故である。
それら支援者の声を無視し続け、形だけの商品化を急いだ結果、K社は大きな代償を支払うことになってしまった。
今後、クラウドファンディングで資金集めを考えている人達や他のプロジェクト実行者にも肝に銘じておいて欲しいと思う。