トリシティ
 
道路交通法における特定二輪車であるトリシティ125は3輪バイクでありながら小型限定普通自動二輪免許で運転でき、原付二種として登録されピンク色のナンバープレートが交付されます。

ここで疑問が。
どうしてトリシティ125は原付二種なのか。

特定二輪車だから」と答えた人、不正解です。

道路交通法における特定二輪車の制度は、本来なら三輪の普通自動車に区分される車両の内、特定の条件を満たすものを自動二輪車として扱うというものです。
しかしそれはあくまで免許や最高速度など、道路交通法における扱いにおいての事です。

一方で、ナンバープレートや保安基準は道路運送車両法で規定されています。
道路運送車両法施行規則において、原動機付き自転車とは次のように定義されています。
第一条 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号。以下「法」という。)第二条第三項の総排気量又は定格出力は、左のとおりとする。
一 内燃機関を原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その総排気量は〇・一二五リツトル以下、その他のものにあつては〇・〇五〇リツトル以下
二 内燃機関以外のものを原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その定格出力は一・〇〇キロワツト以下、その他のものにあつては〇・六〇キロワツト以下
本来ならトリシティ125は125ccですが3輪なので、第一条の原動機付き自転車と見なされず、側車付軽二輪となり、軽二輪の白いナンバープレートが交付されるはずです。
しかし実際は原付二種として形式認定を受けています。

この根拠について探していたのですが、特定二輪車については道路交通法の話ばかり出てきて道路運送車両法における根拠が見つかりませんでした。
探しあぐねていたところ、フォロワーさんから有力な情報がもたらされました。
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示に規定があるとの事でした。
第2条の2 自動車又は原動機付自転車のうち次に掲げるすべての要件を満たすものは、二輪自動車又は二輪を有する原動機付自転車の基準を適用するものとする。
一 三個以上の車輪を備えるもの
二 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に配置されているもの
三 同一線上の車軸における最外側の車輪の接地部中心点を通る直線の距離が四百六十
ミリメートル未満であるもの
四 車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有するもの

ありました。
道路交通法と同じ内容が定義されています。
これを根拠に原付二種のナンバープレートが交付されていたのですね。

そもそも、これを調べようと思った切っ掛けは、トリシティをトライク化改造したものの扱いがどうなるのかを調べていたからでした。

特定二輪車に認定されるには上記の4つの要件を全て満たす必要があり、一つでも外れると、道路交通法では三輪の普通自動車、道路運送車両法では側車付二輪自動車になります。

トリシティ125の場合だと、改造前であれば原付二種のピンクナンバー、改造後なら軽二輪の白ナンバーになります。
これがトリシティ155だと、改造前も改造後も軽二輪の白ナンバーとなり見分けが付かないので、何か見分ける方法がないかを探していたのです。

しかし、上記の道路運送車両の保安基準の細目を定める告示に従えば、軽自動車届出済証には、改造前であれば「軽二輪」、改造後であれば「側車付軽二輪」と記載されるはずなので、容易に判別が可能です。

【2021.1.31追記、ここから】
トリシティ155は、軽自動車届出済証に、従来通り「側車付軽二輪」と記載されるとの事です。
同様にトリシティ300やナイケンでは自動車検査証に「側車付オートバイ」と記載されるそうです。
お詫びして訂正します。

側車付扱いと二輪自動車扱いでは税金などの違いが無いので、記載を変更する必要が無いとの判断だと考えますが、そうなるとトライク化改造した車両について、書類上から判別することが難しくなります。
【2021.1.31追記、ここまで】


特定二輪車の制度が始まったばかりの頃は、この基準が知られていなかったのか、特定二輪車を四輪に改造してトライクとして登録する人が現れました。

tricity4w
【参考:四輪に改造したトリシティ】(画像引用元)

上記の通り特定二輪車の要件を一つでも外れると二輪車ではなくなるので、この場合は四輪の軽自動車となり、トライクとしての登録は出来ません。
しかし、陸運局もよく分かっていなかったらしく、実際にトライクとして二輪のナンバープレートが交付されてしまった車両もあるようです。

もし実際に登録出来たとしても色々問題があります。
先ず、本来は軽自動車なのに二輪車として登録しているのだから脱税となります。
登録時書類に「側車付軽二輪」として申請していれば虚偽申請です。
さらに、二輪から四輪の軽自動車に改造した場合、前面衝突安全基準に合格しなければいけませんが、元が二輪車なので合格はほぼ不可能です。
保安基準を満たしていないので万一の事故の時には大きく不利な立場になることが予想されます。
そもそも車幅の狭いトリシティを四輪にすれば旋回時に車体が傾斜しないため、極めて操縦安定性の低い車両になっている事が容易に推測されます。
恐らく、とても満足に乗れる代物じゃないでしょう。

もっとも、近年はこれが違法車両であることが知れ渡ったらしく、四輪トリシティに乗っていることを公言していた人達もSNS投稿や動画を消してしまったり、車両自体も希にオークションに出てくる程度になってしまいました。

まあ、無理に四輪化しなくても、簡単な改造でトライクにするだけで同じメリットが得られる訳ですから、実用としては意味の無いものと言えます。

トライクの世界は相変わらず混沌としています。