トライク
 
トライクという乗り物が有ります。
一般には「三輪バイク」と言う名前で知られています。
その名の通りオートバイが三輪になったような形状をしているものが多いです。
最近はスクーターなどを改造した小型のものや、専用に作られた特殊な形状のものも見られるようになりました。
このトライク、割と新しい歴史の乗り物のため、車でもバイクでもない、特殊なルールがあります。
ここではそれらをまとめてみました。

トライク=三輪自動車ではない

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【ウォンイットレーシングモデルは3輪だが、この仕様ではトライクとみなされない】

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第2条第1項第4号ロの規定により、トライクとは次のように定義されています。
  • 三個の車輪が付いている。
  • 直進時に轍(わだち)が3本出来る。
  • またがり式の座席。
  • バーハンドル。
  • 運転者席側にドアが無い。
トライクは紆余曲折あって、現在の道路運送車両法では「側車付二輪自動車」に区分されています。
よく言われる「三輪だから三輪自動車」は誤りで、確かに以前は三輪幌型の区分だったのですが、平成11年(1999年)7月16日の運輸省通達により、トライクは側車付二輪自動車に区分されました。
この区分変更は同時期に始まった四輪自動車の前面衝突時の乗員保護の基準の適用を回避するためだそうです。
(参考:「二輪自動車の基本構造を有する三輪自動車の分類の法令による明確化」(内閣府)

これにより、この日以降に登録されたトライクは、道路運送車両法については側車付二輪自動車の法制度が適用されています。

この他に、一般によく言われているトライクの定義には次のようなものがあります。
  • 本車と側車を分離して走行することが出来ない
  • 側車輪も駆動
これは平成12年(2000年)8月18日付けで警察庁が出した「三輪の自動車の道路交通法上の取扱いについて」で、「側車付の自動二輪車と三輪の普通自動車の差異」として次のように書かれています。
1 側車付きの自動二輪車
二輪の自動車に側車が付けられたもの。すなわち、側車を外した場合に運転することができるもの。
2 三輪の普通自動車
三輪の状態のみで運転することができるもの。すなわち、側車を外した場合には運転することができないもの。
  具体的には、側車輪を外した場合に後輪が駆動しないもの、前輪と後輪が同一直線上にないため側車を外した場合に直進できないものなどが考えられる。
これは道路交通法における二輪の自動車(側車付のもの)と普通自動車(三輪のもの)の見分け方を示したものと思われます。
他にも詳細な見分け方を解説した資料があると思うのですが、公開されている通達などから見つけることが出来ませんでした。

トライクは普通自動車

トライクは普通自動車免許で運転することが出来、ヘルメットの着用義務が有りません。
これは道路交通法によりトライクが普通自動車に区分されているためです。
第三条 自動車は、内閣府令で定める車体の大きさ及び構造並びに原動機の大きさを基準として、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、大型自動二輪車(側車付きのものを含む。以下同じ。)、普通自動二輪車(側車付きのものを含む。以下同じ。)及び小型特殊自動車に区分する。
ここで言う「普通自動車」とは、道路交通法施行規則の第二条より次のように定義されています。
車体の大きさ等が、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、大型特殊自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車又は小型特殊自動車について定められた車体の大きさ等のいずれにも該当しない自動車

また、二輪の自動車は次のように定義されています。
大型自動二輪車
総排気量〇・四〇〇リットルを超える内燃機関を原動機とする二輪の自動車(側車付きのものを含む。)で、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの

普通自動二輪車
二輪の自動車(側車付きのものを含む。)で、大型特殊自動車、大型自動二輪車及び小型特殊自動車以外のもの
道路交通法では三輪自動車と言う区分は無く、二輪の自動車でも無いため、いずれにも該当しない=普通自動車となります。

先述の通り現在の道路運送車両法ではトライクは側車付二輪自動車の区分なので、一見、自動二輪車免許が必要かと思われますが、普通自動車免許で運転できます。
警察の見解でも保細第2条第1項第4号ロはトライク=三輪の普通自動車としています。
先述の「三輪の自動車の道路交通法上の取扱いについて」において、
運輸省においては側車付二輪自動車として取り扱われることとなったが、運輸省における道路運送車両法上の取扱いの変更は道路交通法の解釈に変更を及ぼすものではないことを念のため申し添える。
とあり、トライクが引き続き普通自動車免許で運転できることを示しています。

この辺りは警察内部でも混乱があったようで、過去にはノーヘルでトライクに乗っていた人が警察に誤って検挙されたこともあったようです。
問題となった違反摘発は昨年(注:2003年)7月に発生している。42歳の男性(当時)が大阪府大阪市西成区内で「トライク」と呼ばれる三輪型バイクを運転中に信号待ちで停車した際、大阪府警・西成署員から「ヘルメットを着用していない」として違反であることを指摘された。
(参考:「トライクにヘルメットはいらない…警察に不手際」(レスポンス)

聞いた話ですが、トライクに関する法知識の曖昧さにつけ込んで、自動二輪車免許しか持ってない人にトライクを売りつける悪質な業者も居るとのことですので注意が必要です。

側車付二輪自動車=サイドカー付きオートバイではない

ところで「側車付二輪自動車」とは一般にはサイドカー付きオートバイの事ですが、ここで注意しなければいけないのは道路運送車両法上の「側車付二輪自動車」とは単に二輪車にサイドカー(側車)が付いたものではないと言うことです。
道路運送車両法上は二輪車と側車付二輪自動車は全く別の乗り物となります。

この事はあまり知られていないため、次のようなトラブルが起こることもあるようです。

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この投稿者が乗っているのは125ccのトライクとの事です。
道路運送車両法上は二輪車と側車付二輪自動車は全く別の乗り物なので、排気量区分も異なります。
二輪車の場合、排気量50cc超125cc以下の車両は原付二種となりピンク又は黄色の原付ナンバープレートが交付され、高速道路も利用できませんが、側車付二輪自動車の場合は排気量50cc超250cc以下の車両は側車付軽二輪となるため白色の軽二輪ナンバープレートが交付され、高速道路も利用可能になります。

因みに排気量50cc超250cc以下の側車付二輪自動車が自動車専用道路を利用できる根拠は、道路法第二条3項に、
「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車をいう。
とあるためです。
道路運送車両法施行規則第一条において、原動機付自転車とは
(原動機付自転車の範囲及び種別)
第一条 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号。以下「法」という。)第二条第三項の総排気量又は定格出力は、左のとおりとする。
一 内燃機関を原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その総排気量は〇・一二五リツトル以下、その他のものにあつては〇・〇五〇リツトル以下
二 内燃機関以外のものを原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その定格出力は一・〇〇キロワツト以下、その他のものにあつては〇・六〇キロワツト以下
と定義されています。
つまり側車付二輪自動車は道路運送車両法上の原動機付自転車ではないので自動車専用道路を利用できる事になります。

特定二輪車は三輪だけど二輪車

トライクの定義に輪を掛けてややこしくしているのが、平成21年(2009年)9月1日より施行された「特定二輪車」の制度です。
(参考:三輪の自動車の区分の見直し(警察庁))

これは、それまでトライクとして扱われていた車両の内、次の要件に全て該当するものを自動二輪車として区分し直すと言うものでした。
  • 三個の車輪が左右対称に配置されている。
  • 左右の車輪の間隔が460mm未満。
  • 車体を傾けて旋回する。
これに該当する車種は正規に二輪車として扱われ、運転には、対応する自動二輪車免許が必要で、ヘルメットの着用義務が有ります。

特定二輪車は二輪車に近い特性のため、二輪車の操作技能を持たない者が運転すると危険であるとして区分が変更されたのです。

特定二輪車は上記の条件を全て満たしている事が必要なので、特定二輪車の車輪の一つに薄いシムを入れ、左右対称を微妙に崩すことでトライクとして改造している人もいます。
もちろん自己責任であり、お勧めはできません。

トライクの高速道路での法定最高速度は80km/h

道路交通法施行令第27条で次のように定められています。
第二十七条 最高速度のうち、自動車が高速自動車国道の本線車道(次条に規定する本線車道を除く。次項において同じ。)を通行する場合の最高速度は、次の各号に掲げる自動車の区分に従い、それぞれ当該各号に定めるとおりとする。

一 次に掲げる自動車 百キロメートル毎時
イ 大型自動車(三輪のもの並びに牽けん引するための構造及び装置を有し、かつ、牽けん引されるための構造及び装置を有する車両を牽けん引するものを除く。)のうち専ら人を運搬する構造のもの
ロ 中型自動車(三輪のもの並びに牽けん引するための構造及び装置を有し、かつ、牽けん引されるための構造及び装置を有する車両を牽けん引するものを除く。)のうち、専ら人を運搬する構造のもの又は車両総重量が八千キログラム未満、最大積載重量が五千キログラム未満及び乗車定員が十人以下のもの
ハ 準中型自動車(三輪のもの並びに牽けん引するための構造及び装置を有し、かつ、牽けん引されるための構造及び装置を有する車両を牽けん引するものを除く。)
ニ 普通自動車(三輪のもの並びに牽けん引するための構造及び装置を有し、かつ、牽けん引されるための構造及び装置を有する車両を牽けん引するものを除く。)
ホ 大型自動二輪車
ヘ 普通自動二輪車

二 前号イからヘまでに掲げる自動車以外の自動車 八十キロメートル毎時
トライクは道路交通法にあっては普通自動車の区分ですが、三輪のため第27条1号ニの普通自動車の規定が適用されず、第27条2号が適用され法定最高速度は80km/hとなります。


トライクをややこしくしているポイント

こうしてトライクに関する法令を整理してみると、トライクをややこしくしているポイントが見えてきました。
  • 道路交通法の「普通自動車(三輪のもの)」=道路運送車両法の「三輪自動車」または「トライク」
  • 道路交通法の「二輪の自動車(側車付のもの)」=道路運送車両法の「トライク」を除く「側車付二輪自動車」
  • 道路運送車両法の「側車付二輪自動車」=サイドカーまたはトライク
  • 道路運送車両法では「三輪だから三輪自動車」とは限らない
この辺りに注意すれば、トライクの立ち位置が見えてくるのではないでしょうか。
もし法規を知らなかったり誤った理解の結果違反してしまっても、全ての責任は運転者に掛かってしまいます。
トライクの関連法規を正しく理解して安全運転に努めましょう。